助産師さんが知っておきたい母乳育児支援の基本と相談対応のポイント

ミルクを飲ませる助産師

出産後の育児不安の中でも、特に多いのが母乳育児に関する相談。母乳育児支援は助産師さんの重要な役割の一つです。今回は助産師が相談対応力を高めるための最新知識をご紹介します!

なぜ今、母乳育児支援がより重要視されているのか

不安な母親

母乳には赤ちゃんが成長するためのほとんどの栄養素が消化吸収しやすい形で含まれており、感染症から守る免疫物質も含まれています。また、母乳育児は母体の回復を早めるなど、赤ちゃんと母親の両方にメリットがあります
しかし、誰もがはじめから順調に母乳育児ができるわけではありません。母乳育児がうまくいかず、その不安やプレッシャーが育児ストレスにつながると、ホルモンバランスが乱れて母乳の分泌が減少してしまいます。産後うつにつながってしまう場合もあるため、助産師さんによって継続的に母乳育児をサポートすることが重要だといわれています。

助産師が相談対応で押さえておくべき母乳育児支援の基本

母乳育児を成功させるには、出産後できるだけ早く初回授乳を行うことが推奨されています。母乳の生成を促すホルモンである「プロラクチン」の血中濃度は分娩直後が最も高く、その後は徐々に減少します。しかし、産後数週間は乳頭への刺激(授乳や搾乳など)によって一時的にプロラクチン値が上昇し、その減少スピードを緩やかにすることができます。産後30分以内に初回授乳を行い、その後も赤ちゃんの要求に応じて頻回に授乳することで、母乳分泌を促進しやすくなります

母乳育児を希望していても、「母乳が足りていないのでは」と不安に感じ、ミルクを補足したり、完全にミルクに切り替えてしまうケースも少なくありません。実際には母乳が足りておらず、赤ちゃんの体重増加も良好であるにもかかわらずミルクを追加してしまうと、母乳の哺乳量が減少し、それに伴い分泌量も減ってしまうという悪循環に陥ることがあります。母乳が足りているかどうかの判断は、赤ちゃんの機嫌、体重の増加、排泄状況などを総合的に評価し、適切に判断する必要があります

また、乳房が硬くなって痛みを感じる、乳頭に傷ができるなどのトラブルが生じた場合、適切な対処を行わないと、痛みによる授乳困難が増し、乳腺炎や白斑などの疾患へと進行することもあります。授乳姿勢や赤ちゃんの含ませ方を丁寧に確認することが第一歩です。それでも改善しない場合には、乳房マッサージだけに頼らず、必要に応じて専門医への紹介など、速やかな対応が求められます

母乳育児相談でよくある悩みと対応のコツ

母乳育児に関する不安や疑問はさまざまですが、特に多いのは母乳が足りていない気がするという母乳不足感。飲んだ後すぐに泣きだしたからと言って、母乳が足りないわけではありません。赤ちゃんの体重が順調に増えているか、おしっこはどれだけ出ているかを冷静に評価しましょう。
赤ちゃんは口の奥深くまで乳頭~乳輪を引き込んで母乳を飲み取ります。うまく吸えない場合は、まず赤ちゃんと母親のおなかが向き合っていることを確認しましょう。基本の姿勢ができていないと、乳頭と赤ちゃんの口が密着しづらいのです。そして、赤ちゃんの下あごが乳房につくようにして、口を大きく開かせ、アヒルのような口の形で吸わせるのがポイントです。
ミルクを足すべきか迷っている場合は、赤ちゃんの様子だけではなく、母親の負担になっていないかどうかも見て、総合的に判断しましょう。母乳であれミルクであれ、授乳の時間は赤ちゃんとのスキンシップの時間です。母親がゆったりとした気持ちで今しかない幸せな時間を楽しむことが一番大切です。

助産師が「相談対応力」を高めるためにできること

一人一人に寄り添ってサポートするためには、定期的にチーム内で事例を共有したり、勉強会に参加したりして最新マニュアルやガイドラインを確認しておくことが必要です。母乳育児は母親がひとりで悩みを抱えてしまうことが多いため、共感しながら話を聞く傾聴スキルや共感的コミュニケーションを習得するとよいでしょう。
家事や育児で疲れている母親には、ゆっくり体と心を休めることができる産後ケア施設や母乳外来など必要なサポートを紹介することができるように、それぞれ連携を強化しておくとよいでしょう。

母乳育児支援は正しい知識と温かな寄り添いの両方が必要です。助産師自身が情報をアップデートし、母親の不安を受け止められる存在でありたいですね。

※参考
(厚生労働省)『授乳・離乳の支援ガイド
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