看護師さんの中には、災害時や新興感染症発生時に現地で看護業務に従事する「災害支援ナース」と分類される看護職があります。
被災した患者に適切な看護を提供し、被災地の看護業務の負担を軽減するのが災害支援ナースの主な役割です。
1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに作られたこの制度では、以降、災害発生時には都道府県看護協会に登録している看護師を災害支援ナースとして派遣し、応援要請に迅速に対応する体制が整えられています。
災害支援ナースが担う医療現場での業務内容は?
それでは実際、災害支援ナースは被災地でどのような看護業務を担うのでしょうか?
まず、派遣先の医療機関や福祉施設または避難所で被災者の看護を行います。
看護師さんとして培った経験や専門知識を活かし、多くの患者の病状把握やモニタリング、処置など迅速な判断で適切な看護を提供するのが主な業務です。
また避難所においては、慢性疾患を持つ避難患者の看護や体調管理、避難者の心身のケア、避難所生活の環境整備や感染症対策など、看護業務だけに留まらず生活全般に関する支援を行い、避難者の心身の健康を保つために従事することも大切な業務の一つです。
災害支援ナース、看護師の資格があればなれる?
災害支援ナースになるためには以下の要件を満たしている必要があります。
① 都道府県看護協会の会員であること
② 看護師としての実務経験が5年以上であること
③ 所属施設がある場合、所属長の承認が得られていること
④ 災害支援ナース養成のための研修を受講していること
これらの要件を満たしていれば災害支援ナースとしての活動は可能ですが、災害発生時において非常に重要な役割を担うため、臨床で積んできた技術、実行力や協調性が必要となります。
また災害支援ナースとしての活動時期は発災後3日以降から長ければ1カ月間にも及ぶことがあり、体力面と精神面の丈夫さ、状況によっては混乱した現場での冷静な判断力や行動力も資質として求められます。
災害支援ナースと災害派遣医療チームは何が違う?
災害時に現地で支援を行う看護職は他にも存在します。
それがDMAT(ディーマット)と呼ばれる災害派遣医療チームです。
このDMATは災害時に迅速に現地へ駆けつけ適切な医療が提供できるよう訓練を受けた医療従事者で、基本的にチームで医療活動に従事し、医師1名、看護師2名、それ以外の医療及び事務職員1名で構成されます。
災害支援ナースが発災後3日以降から被災地での活動を開始するのに対して、災害派遣医療チームは発災後48時間以内に被災地で活動を開始する機動性を持つのが特徴です。
また、チームの一員として従事するにはいくつかの要件を満たし試験に合格しなければなりません。
災害支援ナースとして働くメリット
災害支援ナースとして働くことのメリットは、災害現場での幅広い看護知識や技術が身につき、その経験や専門性は他の多くの医療現場で活かすことができるため、看護師さんとしての優位性を高められるという点でしょう。
これまでは、災害支援ナースとしての派遣先での業務は、ボランティア活動という位置づけにあたり特別手当等がなく、加えて事故補償について曖昧な点もあることが、懸念事項として活動に参加する際の制約になっているのがデメリットでした。
ですが令和6年度以降は、災害救助法・改正感染症法の規定に基づき、派遣に係る実費は公的に負担され、災害支援ナースとしての看護業務を安心して行える環境が整備される予定です。
やりがいがあり社会貢献度の高い災害支援ナースとして働くことで看護師さんとしてのキャリアアップが図れるでしょう。