緩和ケアと聞いて、まず頭に思い浮かぶのは、終末期のがん患者さんではないでしょうか。
しかし昨今の医療では、早期のがん患者さんやその他の根治が難しい神経疾患や慢性疾患、認知症など、幅広い疾患に対して、緩和ケアが治療の中の重要な要素として位置づけされています。
緩和ケアとは、患者さんの身体的な苦痛や精神的な不安を和らげ、心身共にQOLを向上させるため適切なケアを提供することが目的です。
そんな緩和ケアにおける看護師さんの役割や病棟でのお仕事内容などを具体的に見ていきましょう。
医療における緩和ケアの現状
1990年、5病棟しかなかった緩和ケア病棟ですが、診療報酬における緩和ケア病棟入院料が設定され、2002年に緩和ケア診療加算が新設されたことも契機となり、2020年には、ホスピス・緩和ケア病棟の数は453棟にまで増加しました。
このことからも、緩和ケア分野が現代の患者さんにとって必要不可欠なものだとわかるでしょう。
また、緩和ケアは、医師、看護師、心理士や理学療法士、ケアワーカーなど多業種が連携をとって患者さんへ多角的なアプローチをします。
現在、業界ではさまざまな疾患に対する緩和ケアの普及に向けた取り組みが進められている段階で、チーム医療やその他の体制の整備などまだまだ発展途上にあり、今後ますます需要が高まる領域と考えられています。
緩和ケア病棟の看護師さんは特別な資格が必要?
それでは、専門性の高い緩和ケア病棟に勤務する看護師さんには、どんな知識や技術が必要なのでしょうか? 特別な資格がなければ緩和ケアに携われない、などということはありませんが、緩和ケア分野に役立つ資格はいくつか存在します。
がん看護専門看護師、慢性疾患看護専門看護師、緩和ケア認定看護師(がん性疼痛看護認定看護師と統合)などの資格は、それぞれの分野ごとに専門的な看護知識と技術を有する看護師さんの資格です。
これらの資格は、患者さんやその家族の抱える苦痛や悩みを総合的に捉え判断する力と広い視野で、緩和ケア分野においてはおおいに活用できるものでしょう。
2023年12月時点では、全国に2400人余りの看護師さんが、緩和ケア認定看護師さんとして認定されています。
緩和ケアについて深く学びたいと考えている看護師さんは、資格取得でさらなるキャリアアップも図れる分野でしょう。
緩和ケア病棟での具体的な仕事内容は?
次に、病棟での患者さんへの具体的な緩和ケアの内容を確認してみましょう。
・身体的な疼痛や精神的な不安のコントロール
医療用麻薬を用いて(主にがん疾患の)痛みや不安を鎮痛、鎮静し、穏やかな日常生活を送れるようにサポートします。
・患者さんやご家族のメンタルケア
治療や予後への不安を抱える患者さんやご家族に対して、医師や心理士などの他業種と
連携して、きめ細やかな支援をします。
・入院生活全般のサポートと退院支援
患者さんと丁寧なコミュニケーションを図り、意思を尊重しながら治療や入院中の身の
回りのケアをします。また在宅緩和ケアの移行にむけて他職種と連携し在宅移行のサ ポートをすることもあります。
他にも、在宅で療養生活を送る患者さんへの緩和ケアでは、医師に同行して患者さんの自宅でバイタルチェックや疼痛管理、日常生活の支援を行うこともあるでしょう。
緩和ケアの看護師として働こう!
緩和ケアを受けている患者さんにとって、看護師さんは、自身の苦痛を委ね貴重な時間を共に過ごす、とても身近で重要な存在です。
患者さんがその人らしく過ごせるよう、できる限り不安を取り除くことが責務となる意義の大きな緩和ケア分野は、看護師さん自身の精神的負担や責任を強く感じる反面、やりがいが大きな職場でしょう。
ご自身の看護観と照らし合わせて、新たな分野へチャレンジするのも今後の看護師としてのキャリアにきっとプラスに作用することでしょう!
(ホスピス財団) 『データで見る日本の緩和ケアの現状(PDF)』
(厚生労働省) 『緩和ケアの提供体制(PDF)』『医療用麻薬適正使用ガイダンス(PDF)』
(日本看護協会)『専門看護師・認定看護師(PDF)』