近年、医療現場で重要視されているNSTという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
NSTとはNutrition Support Teamの略で、病院における栄養サポートチームのことです。
医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士などさまざまな職種がチームに参加し、それぞれの視点で患者さんの栄養状態をよくするサポートをします。
今回はこのNSTでの看護師さんの役割について解説していきます。
NSTでは何をするの?
栄養状態が悪いと、体力、筋力、免疫力などが低下し病気が治りにくいため、いろいろな専門家が力を合わせて患者さんが適切に栄養を取れるように考えていきます。
まず栄養状態が悪い、または悪化のリスクがある患者さんを見つけて、実際に患者さんの様子を観察して栄養状態を把握します。
患者さんの食事内容や点滴・経管栄養など食事のとり方を把握し、より栄養を吸収しやすいような方法を考えます。
栄養状態が改善することにより、免疫力が向上し、より早く病気が治ったり、入院期間を短くできたり、合併症を予防できたりとさまざまな利点が生まれます。
合併症を予防することにより、抗菌薬などの薬剤の使用が減ります。
また、口から食事をとれるようになると輸液の使用量も減り、病院のコスト削減にもつながります。
NSTのメンバーと役割は?
NSTの取り組みは、医学的な栄養管理だけではなく、患者さんがおいしい食事を楽しみ、生活の質を上げることにもつながります。
NSTは一般的に次のようなメンバーで構成されます。
医師
患者さんの病態を把握し、医学的な治療方針を決め、治療に必要な指示を出します。
病気で食欲がなく食べられない患者さんや、嚥下機能が低下して口から食事をとれない患者さんには経管栄養など、それぞれに合った栄養補給や栄養管理の方法を提示します。
医師はNSTにおいてチームをまとめる役割を担うこともあります。
看護師
NSTの対象となる患者さんの検査データや病態などの情報をもとに、栄養サポートが必要な患者さんを選びます。
患者さんと相談しながら、症状や好みに合わせた食事ができるように支援していきます。
治療方針や現状に対するご家族の反応を確認して、チームのメンバーに共有することも看護師さんの役割です。
管理栄養士
食事の専門家として、患者さんがどれくらい食事を食べていて、実際にどのくらい栄養がとれているのか評価します。
口から十分な食事がとれない方には食べ物を刻んだり、とろみをつけたりと食べやすい工夫をしたり、栄養計算し必要なカロリーやタンパク質などが摂れるよう献立を考え提供します。
薬剤師
栄養療法で使用する栄養剤などが適切に使用されるように確認します。
服用している他の薬に影響がないことを確認し、患者さんへの服薬指導などを行います。
理学療法士
主に全身を使ったリハビリテーションを担当します。
体を動かして体力をつけることで食欲を増やしたり、栄養吸収を向上させたりすることが期待できます。
作業療法士
患者さんの腕や手先のリハビリテーションや嚥下訓練などを行います。
食事の際に必要な一連の動作を訓練することは、誤嚥を予防し食事の量を増やすことにもつながります。
言語聴覚士
主に嚥下運動など口腔機能にかかわる患者さんの状態を観察し、評価します。
臨床検査技師
栄養評価の指標となる検査データの管理を行います。
臨床工学技士
患者さんが使用する医療機器の保守点検を担当します。
歯科医師
患者さんが快適に食事をとれるように、口腔内の疾患や機能を診断し、治療します。
歯科衛生士
患者さんの口腔環境を評価し、機器を使って口腔清掃を行います。口腔ケアは食事と密接にかかわりますので、患者さんやご家族に口腔ケアの提案や指導も行います。
このように、たくさんの専門家が連携してひとりの患者さんをサポートしていることがわかりますね。
チームで医療を提供することで、患者さんはきめ細かい治療やケアを受けることができ、病気の早期回復や入院日数の短縮につながります。
医療の質や効率もよくなり、医療従事者の負担も軽減できます。
看護師さんは患者さんと直接かかわることが多いので、患者さんとチームの仲介役として各メンバーと情報を共有し、調整することが必要になります。
チームで働きたい看護師さんなら、NSTのメンバーという立場はやりがいがあるといえるでしょう。
ご自身の働いている職場や、転職したい病院や施設にNSTがあるかどうか、調べてみてはいかがでしょうか。キャリアアップにもつながるかもしれませんよ。