看護師さんの夜勤手当は、心身に負担のかかる夜間勤務への対価として、重要な収入源です。しかし、日本看護協会の最新調査によると、この10年間での夜勤手当の増加幅は意外にも小さく、2交替制で約+1,000円、3交替制ではわずか約+500円にとどまっています。そして、基本給の伸びが鈍い中、夜勤手当の設計や夜勤回数が、実際の収入に大きく影響していることも明らかになりました。
この記事では、夜勤手当の「額面」だけでは見えない制度の仕組みと実態を、わかりやすく解説していきます。
夜勤手当の変遷(2012→2024)を比較してみると…

2交替と3交替制の夜勤手当がこの10年で微増にとどまっていることから考えると、実収入を左右するのは「回数」と「割増の扱い」といえるのかもしれません。
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査報告書」(第1章Ⅶ・p.70–79)によると、病院勤務の看護師さんに支給される夜勤手当の平均額は以下のとおりです。
| 交替制 | 勤務区分 | 2012年(円) | 2024年(円) | 増加額(円) |
|---|---|---|---|---|
| 2交替 | 夜勤 | 10,819 | 11,815 | +996 |
| 3交替 | 準夜勤 | 3,812 | 4,567 | +755 |
| 3交替 | 深夜勤 | 4,635 | 5,715 | +1,080 |
一見すると深夜勤の増加幅が大きく見えますが、3交替制では1回の勤務時間が短く、手当も分割されるため、月間の総額は勤務回数や深夜帯の比率に大きく左右されます。つまり、夜勤1回あたりの金額だけでは実収入を測ることはできず、深夜割増の扱いや夜勤回数が、収入の実態を左右する重要な要素となっているようです。
法定の深夜割増と夜勤手当の関係を整理しよう
夜勤に関わる賃金の仕組みを正しく理解するためには、法定の「深夜割増」と「夜勤手当」の関係を整理しておくとよいでしょう。
まず、労働基準法では、午後10時から午前5時までの労働に対して25%以上の深夜割増賃金を支払うことが義務付けられています。さらに、時間外労働と重なる場合には、時間外割増(25%)と深夜割増(25%)が合算され、50%以上の割増率が適用されます。
ただし、夜勤手当の支給方法は施設によって異なり、求人票では「夜勤手当」として定額部分が明記されていることが多いですが、深夜割増が別途支給されるのか、それとも定額手当に内包されているのかは明示されていない場合もあります。これを見落とすと、実際の手取り額に大きな差が生じる可能性があるでしょう。
交替制別の見方:2交替/3交替で何が違うの?
「1回の手当」だけでなく「回数」と「深夜帯比率」に注目してみましょう。
交替制の違いによって、夜勤手当の構造や実収入への影響は大きく異なります。
【2交替制】
1回の勤務時間が長く、夜勤手当の1回あたりの金額は高めです。ただし、深夜時間に重なる時間が長いため、深夜割増の扱いが収入に直結します。
【3交替制】
1回あたりの手当は少なめですが、夜勤回数が多くなる傾向があり、月間の夜勤手当総額は勤務頻度と深夜帯比率に左右されます。
つまり、夜勤手当を比較・評価する際には、以下の5つの視点が重要です。
2. 月あたりの夜勤回数
3. 深夜割増の算定方法(別計算か内包か)
4. 一定回数超の加算の有無
5. 夜勤導入前の教育・研修体制(夜勤導入計画)
求人票で確認すべきポイントとまとめ
夜勤手当の実態を見極めるには、求人票や労働条件通知書の記載を丁寧に読み解くことが大切です。
特に、以下の点をチェックすることで、実際の収入や働き方のイメージがつかみやすくなるでしょう。
• 夜勤1回あたりの定額手当額と深夜割増の算定方法
• 一定回数を超えた場合の加算の有無
• 年末年始・休前日などの特別加算の有無
• 夜勤専従者の処遇や、夜勤導入までの教育計画の有無
夜勤手当の金額そのものは一見シンプルに見えても、勤務形態や深夜割増の扱い、加算条件など、制度設計や勤務実態によって、実際の手取り額には大きな差が生まれます。だからこそ、求人票を見るときには「額面」だけではなく、その内訳や条件をしっかり確認し、自分に合った条件を見極め、納得のいく選択をしていきたいですね。
















