高齢化が進む日本では、高齢者が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるための「在宅医療」がますます重要になっています。
その中核を担うのが、訪問看護師をはじめとする看護職です。看護師さんは医師や理学療法士(PT)、薬剤師、ケアマネジャーなどの職種、また患者ご家族などと連携しながら、患者の生活と療養を支える「ハブ役」になることが求められます。
今回は、そんな在宅医療における看護師さんの連携スキル、また調整方法のポイントについて解説。これらは在宅医療以外の現場でも生かせますので、ぜひご一読ください!
多職種×家族との連携における看護師さんの調整ポイント

在宅医療では、職種ごとに異なる専門性を生かしながら、患者のQOLを高める支援が求められます。では、具体的に各職種との連携において看護師さんに求められる調整ポイントを具体的に見ていきましょう。
1. 医師との連携
同席カンファレンスで「医師の意図」を要約し、多職種へ共有
医師が伝えたいこと、例えば診療方針や治療計画を、専門用語をかみ砕いて全員に共有することでチーム全体の理解と協力を促進します。
2. 理学療法士(PT)との連携
リハビリ依頼時に「目標+期限」を明示
「いつまでにどうなることが目標か」明確に伝えることで、チームの力を最大限に発揮しながら一緒にゴールに向かうことができます。例えば、「歩行距離を20mまで延ばす」「2週間以内に、手すりを使いながら10段の階段を1人で昇降できるようにする」など、具体的なゴール設定がリハビリの質を高めます。
3. 薬剤師との連携
服薬カレンダーを共同作成し、誤薬防止
目に見える指標があれば、間違いを減らし、目的を共有しやすくなります。服薬カレンダーで薬の種類や服用時間を視覚的に整理することで、患者や家族の服薬管理を支援するのはおすすめの方法です。
4. ケアマネジャーとの連携
報告書を24時間以内に共有
看護現場での業務が多忙で他の職種への報告が遅れがちになるかもしれませんが、状況変化や医療処置の内容を、24時間以内を目安に迅速に伝えることで、ケアプランの見直しやサービス調整がスムーズに行えます。
5. 患者家族との連携
家族カンファレンスで「不安・希望」を可視化する質問を
家族カンファレンスでは、より分かりやすい言葉で患者家族に伝え、心情に配慮しながら、理解が進んでいるかを確かめるのがポイントです。「今一番心配なことは何ですか?」「どんな生活を望まれていますか?」など、感情や希望を引き出すことで、支援の方向性が明確になります。
チーム全体の質を高める振り返りと改善
週次振り返りで課題→改善案をPDCAサイクルで共有
チーム全体としての進み具合を確かめるマネジメント能力があれば、今後の看護師さんライフでも強みになります。
PDCAサイクル―Plan(計画を立てる)→Do(実行する)→Check(評価する)→Act(改善する)を意識的に回しながら、定期的にチームで共有することで、継続的にケアの質を高めることができます。
看護師の連携力が在宅医療の質を左右します!
看護師さんは、在宅医療において、医療と生活の両面を理解し、患者・家族・多職種の間をつなぐ「調整役」として不可欠な存在です。在宅医療においては単なる医療提供者ではなく、生活支援者としての視点が求められる場面も多いでしょう。
そのような意味からも、地域包括ケアの推進において看護師さんの多職種連携力は重要なポイント。地域の医療・介護・福祉関係者との連携もこれからより重要になってくるに違いありません。
この連携スキルは、看護師さんが今働かれている現場はもちろん、転職やキャリアアップの場面でも高く評価される強みとなるのです。在宅医療の現場は、一生ものの連携・調整スキルが身につく現場とも言えそうですね。